HAPPY MILK PROJECT

現地訪問レポート

2014年度 ハッピーミルクプロジェクト・シエラレオネ レポート

1.視察の目的

2014年に新たに支援することとなったシエラレオネ共和国の状況を実際に訪問することで把握し、組合員や職員に広報するための素材の調達。

2.視察場所

シエラレオネ共和国の北西部に位置するボンバリ県を訪問。

ボンバリ県の概要
  • 人口:49万人(シエラレオネの人口:609万人(2013年))
  • 1歳未満の子ども:19,000人
  • 5歳未満の子ども:87,000人
  • 妊婦:20,000人
  • 21箇所の医療施設のうち、3箇所でしか急性栄養不良を治療することができない。
  • ボンバリ県には13の首長国がありそのうちの3首長国でのみ、NGOが栄養不良の対策が行われている。しかし、2015年度にはNGOの支援が休止されることになっており、それ以降NGOの支援が入ることは決定されていない。
視察場所の地図

3.シエラレオネ及びボンバリ県での課題

  • 妊婦や母親の出産・育児の社会的環境(衛生面・栄養面・精神的ケア)は厳しい。加えて、10代での妊娠・出産が多く、因習的知識や育児慣習で家族計画・妊娠・出産・母乳・育児・栄養等の知識不足が深刻。
  • 生まれたばかりの子どもに母乳を与える習慣がなく、母乳自体が体に悪いとされています。女性に職がなく自立が遅れ、男性に依存する環境の中で、自分の体型や魅力を保持するために授乳を嫌う女性もいる。
  • 母親自身の栄養状態も良くないにも関わらず、鶏肉・ヤギ肉や卵などの栄養のあるものを、貧困ゆえにそれらを売って現金収入に換えるだけで食生活に積極的に取り入れていない。何をどれだけ食べれば健康に良いのかを知らない。

4.視察の内容

マケニ国立病院の視察

マケニ国立病院は、ボンバリ県において急性栄養不良を治療できる3つの施設のうちの1つです。

5歳未満の子どもに対して体重や上腕周りなどのチェック(ムアック)をして、基準に満たないとプランピーナッツ(栄養補助食品)を処方します。プランピーナッツは3~4週間分を与えられますが、以降は親が栄養を考えた食事を行っていく必要があるため、栄養指導も行われます。

【ベッシさん23歳(母)サフィシセちゃん4ヶ月(子)】

4ヶ月で3.1キログラムしかないサフィシセちゃんは、急性栄養不良で入院。
母親のベッシさんは、4人の子どもを既に栄養不良で亡くしています。

その都度、母乳育児を指導されていますが、もともと母乳を与えなければならないという考えを持っていないので、私たち視察団の目の前でも井戸水を与えようとして慌てて看護師が取り上げる場面もありました。

あまりにもひどい栄養不良のため、サフィシセちゃんは呼吸も荒い状態で苦しさがこちらにも伝わってきました。長期の入院(無料)が必要にもかかわらず、ベッシさんは自分の不在中に夫が逃げるのではないかと言う不安から、入院を拒否。

ユニセフ事務所の栄養担当(ハムジャツさん写真右が、「約束よ!母乳を与え、きちんと入院しなさい!あなたの住所は知っているのだから、もし逃げ出したら、私があなたの家まで行くわよ!」と強く指導し、なんとか長期入院の約束をさせていました。

ベッシさん23歳(母)サフィシセちゃん4ヶ月(子)の写真
ユニセフ事務所の栄養担当の写真

アリス・コロマ小学校視察

シエラレオネ共和国は、小学校は無料で行くことができます。中学校へ進学するにはテストがあり、合格した人のみ進学できますが、女性は無料で男性は有料(50ドル/年)であり、これは女性の就学率促進の国策で行われています。

この日は、中学校受験のための補講が行われていて、普段はノートや教科書などを使って授業を受けますが、この日は口頭で授業が行われていました。試験は、英語、算数、英文法、幾何代数・面積、一般教養(体育、家庭科、科学、農業科学)の5科目で行われ、100点満点で、230点が合格ラインとなっています。

【子どもたちの将来の夢】

ナシャさんの写真

ナシャさん・・・・弁護士

サンバ君の写真

サンバ君・・・・軍人

イブラヒムさんの写真

イブラヒムさん・・・・看護師


夢を持って、毎日勉強に励む子どもたち。未来のなりたい職業を話す明るくまっすぐなまなざしが印象的で、将来のシエラレオネを背負っていく若い人材として頼もしく思いました。ハッピーミルクプロジェクトの支援は教育支援は含まれませんが、子どもたちが集中して勉学に励めるように栄養面からのサポートができるのでとても貴重であるといえます

マクベス病院

マクベス病院はスイス政府の援助を受けた私立病院です。

栄養に関しては、Stabilization Center(日本には定義のない施設で、重篤な症状を一旦安定させるための機能をもつ医療施設)が治療を行っています。

私立病院であり公的な病院でないため、存在が住民に知られていないということでした。

マケニの国立病院と同様に、急性栄養不良の子どもたちに対して、栄養補助食品、栄養強化ミルクなどの配布が行われています。

【入院中の赤ちゃん】

ファトゥマタさん(母)、オスマンちゃん(子:2歳2ヶ月)の写真
  • 急性栄養不良で入院しているファトゥマタさん(母)、オスマンちゃん(子:2歳2ヶ月)。オスマンちゃんは、浮腫(たんぱく質不足を起因とするむくみ)となっており、足の甲を軽く押しただけでへこむ状態。(写真左)しかし、2日後、病院に再訪したときには、浮腫はなくなっていっていました。プランピーナッツや栄養強化ミルクなどの治療の効果がすぐにあらわれたと思われます。
    ファトゥマタさんは、近所のお母さんと子どもが病院に行って、子どもが元気になって戻ってきた姿を目にし、病院に子どもを連れて行くと決めたということでした。
    ダンケさん(母:34歳)、アダマちゃん(子:1歳10ヶ月)の写真
  • ダンケさん(母:34歳)、アダマちゃん(子:1歳10ヶ月)。もともとフリータウンに住んでいましたが、小児科がなく、地元のマケニで子どもの治療を行うためにやってきました。村の人たちから、子どもの痩せた背骨が目立つ栄養不良の状態をみて、「悪魔、カメレオン」と言われ、医学的根拠のない薬草による伝統的な医療で治療され、それがいっそう深刻な栄養不良を進行させてしまっていました。
    このような因習由来の栄養失調も深刻となっています。シエラレオネの、栄養不良の改善には一人ひとりのお母さんへのカウンセリングを通じて個々の具体的な問題を発見し、その実情にあった治療方針や啓蒙・教育が必要です。しかし、お母さんを教育してもコミュニティに戻れば、長老や祖母世代の古い考え方の中で孤立してしまうことをおそれ、また子どもがもとのように栄養不良になることもあります。
マグバングバ ンゴワフン地区の首長を訪問(4月17日)
マグバイングバ ンゴワフン地区の首長の写真

シエラレオネには村を束ねる首長がおり、その首長が地域自治の権限に関わっています。マグバングバ ンゴワフン(105の村を束ねる)の首長であるカンダフ フィノフ セカンドさんを尋ね、その地域の取り組みを伺いました。

カンダフさんは、2005年に前チーフのお父さんから、チーフの地位を譲り受けました。彼は地域に中学校がないことから、自らの手で、中学校を設立。その後地域のさまざまな問題も目を向けるようになりました。NGOなどからも栄養の知識を学び、村人が健康に育つよう地域独自の規則も作成し、栄養に力をいれた取り組みをしています。栄養や子どもに関する規則としては、妊婦に定期的な検診に行くように推進すること、出産は必ず医療施設で行うこと、母乳育児を推進することなどを取り決めています。

カンダフさんのような住民から信頼され、尊敬され、強いリーダーシップを取れるような存在が増えることが、栄養不良の改善に役立つと考えられます。カンダフさんのような開明的で進歩的な首長のもとでのモデルケースとして注目されています。

【この地区のお母さんグループ】

写真左のジョゼフさんは1歳3ヶ月の子どもを持つお母さん。母乳は大事、子どもは保健センターで生みましょうなどの啓蒙を行う「お母さん支援グループ」の副リーダーを勤めています。写真の子どももまるまるとしており、とても健康的で、ジョセフさんはこれまで母乳のみで育ててきたということでした。

ジョゼフさんの子どものような健康的な赤ちゃんの姿をみて、「自分もこのグループに入り、子どもを健康に育てたい」と話すのは写真右のお母さん。お母さん支援グループの活動は、因習の中で子育てするお母さんたちを目覚めさせ孤立から救い、確実に有効な影響をひろげ大きな成果をあげています。ジョゼフさんは、「もっとメンバーシップを増やしていきたい。自分たちの農園を作って販売して活動資金にしていきたい。」と夢を語ってくれました。

マグバイングバンゴワフン地区のジョゼフさんの写真
マグバイングバンゴワフン地区のお母さんの写真

ロバット村の産科・小児科施設の視察

この施設では、子どもの栄養不良をチェックする活動を視察できました。

栄養不良を判断する基準として、上腕周りが13センチメートル以上だと健康、12.9~11.5センチメートルだとボーダーライン、11.4センチメートル以下だと栄養プログラムが適用されます。11.3センチメートル以下だと栄養補助食品などが援助される栄養プログラムが適用されるようになります。

18歳の若いお母さんのアイサツさんに会い、娘のザイナムちゃんの上腕周りの測定を行っているところを見ることができました。ザイナムちゃんは、上腕周りが11.4センチメートルでしたが、再度計測しなおしてもらって11.3センチメートルとなり、栄養補助食品をもらえることとなりました。

【アイサツさんのマイェンデコミュニティとご自宅訪問】

アイサツさんのコミュニティとご自宅を訪問しました。

母親、兄弟と同じ部屋で暮らすアイサツさん。旦那さんとは4年前に結婚し、ザイナブちゃんを妊娠。しかし、なぜ自分が妊娠したか、わからないと言っていました。家族計画の知識がないのです。

しかし、赤ちゃんができたことは本当にうれしく思っていてかわいがっていました。今は、保健センターに行くことで、家族計画の教育も受け、コントロールができています。


マイェンデコミュニティの写真
アイサツさん親子の写真

5.視察を通して感じたこと

日本で得られるシエラレオネ共和国の情報は、内戦の悲惨さ、内戦終結後の貧困ばかりでしたが、実際のシエラレオネ共和国は緑豊かで農作物や食べ物が豊富で、明るい印象を受けました。

しかしながら母子の健康状態や子どもの栄養状態は事実深刻で、衛生・医療・教育のインフラが整っていません。

また、まだまだ根強く残る伝統的習慣や因習に翻弄される若いお母さんたちがたくさんいることが深刻さ困難さを増長しています。

病院ができる、保健センターができる、薬や栄養剤が届く…という物質的条件だけでなく、献身的な医師・看護師・保健師・栄養士・行政関係者そしてボランティアお母さんグループ等々の人的資源の育成・確保によるカウンセリング・対話・コミュニケーション・啓蒙・広報宣伝の強化が急務と言えます。

シエラレオネ共和国・現地の人たちの認識が変わらなくては、シエラレオネの現状を変えることはできません。

一方で、現状を変えようとする情熱と使命感に燃えた若い人材が確実に育っていて、頑張るお母さんがそこにいる…ということもしっかりと視察で確認することができました。

希望の光であり、この光に託してシエラレオネ共和国の未来を見つめたいと思いました。

ユニセフ・シエラレオネ事務所の代表のゴパル・シャルマさんの「必ず成功するが、それは長い道のりになるだろう。」の言葉を実感をこめて重く受け止めました。

多くの組合員にこうした実情をお知らせして、ハッピーミルクプロジェクト・シエラレオネの取り組みを大きくひろげて行く必要があります。

バックナンバー
モザンビーク訪問レポート2013
モザンビーク訪問レポート2012
モザンビーク訪問レポート2011
モザンビーク訪問レポート2010
モザンビーク訪問レポート2009
モザンビーク訪問レポート2008