HAPPY MILK PROJECT

現地訪問レポート

2018年度 ハッピーミルクプロジェクト・シエラレオネ レポート

1.視察の目的

2014年より支援を行っているシエラレオネ共和国を訪問し、栄養改善プログラムの進捗状況と成果、今後の課題を確認します。現地の取り組み内容を組合員や職員にわかりやすく広報します。

2.日程・訪問先

  • 5月12日~5月20日(現地滞在 5月14日~5月18日)
  • 首都フリータウンのユニセフ・シエラレオネ事務所
  • 東部地域のコノ県 コイドゥ市、カイマ村、マンジャマ村

3.シエラレオネの状況と課題

シエラレオネの人口の約半数は18歳未満の子どもです。
平均寿命が52歳と非常に短く、5歳の誕生日を迎えることなく命を失う子どもの数が世界で4番目と非常に多い国です。命を失う原因はおもに肺炎・マラリア・下痢といった、栄養状態を改善できれば防げるものです。

栄養不良「子どもの未来は栄養が握っている」(日本ユニセフ協会ホームページ)

シエラレオネと日本
シエラレオネ 日本
総人口 約 740万人 1億 2,774万人
18歳未満の子どもの人口 363万人 2,005万人
5歳未満の死亡率 1,000人中 114人 1,000人中 3人
妊産婦死亡率 10万人中 1,360人 10万人中 5人
出産時の平均寿命 52歳 84歳
成人の識字率 32% -
1日1.90ドル未満で暮らす人の割合 52% -

出展:世界子供白書2017

4.視察

(1)ユニセフ・シエラレオネ事務所

ユニセフ・シエラレオネ事務所の栄養改善プログラム担当モーゼスさんから、報告をうけました。

栄養不良の改善のためには、栄養状態の悪い子どもを早い段階で見つけ出し、適切な治療に導くことが最大の課題です。このために、県内の保健センターで健診を行い、子どもの栄養状態を調べ、必要な栄養改善を行う取り組みを進めています。

栄養改善プログラム担当のモーゼスさんの写真

栄養改善プログラム担当のモーゼスさんから、コープデリグループの支援の進捗と成果を教えていただきました

この取り組みを行うため、保健センター職員の研修、子どもの計測器(体重計、身長計、二の腕の周囲を測るメジャー)・栄養治療食などを整備しています。2014年の支援開始から2017年末までにコープデリグループの支援で、95人の職員に研修を行い、支援前の2.6倍の44センターで健診と治療ができるようになりました。コノ県内の保健センター88のうち半分で実施していることになります。

2017年、この取り組みを通じて、コノ県では2,820人の子どもが重度の急性栄養不良であると診断され、栄養治療食を定期的に摂取する治療を受けました。この結果、87.1%の2,455人の子どもが治療を必要とする状態を脱することができました。

コープデリグループの支援で大きな成果を出すことができたとの大変うれしい報告でした。

2018年にめざすこと

  • 保健センター職員の研修(32人)
  • 健診・栄養改善治療を行えるセンターを15ヶ所増やす
栄養改善治療に使用するミルクの写真

栄養改善治療に使用するミルク・栄養治療食・二の腕を測るメジャーです

(2)カイマ村保健センター

保健センターのコミュニティ保健員が村を訪問し、発育に問題がありそうな子どもを見つけだします。その子どもと母親に保健センターでの健診に参加するよう促します。

健診では、体重・身長・二の腕の太さを毎週測定します。

栄養不良時の体重測定しているう様子の写真
栄養不良時の慎重測定している様子の写真
栄養不良時の上腕測定している様子の写真

緑・黄色・赤で色分けされています。
黄色で危険信号、赤で重度の状態と診断されます

月齢に比べて二の腕が細すぎる子どもには栄養治療食のプランピーナッツを与えます。その場で1つ食べさせ、子どもが食べられるだけの体力があるかを調べます。プランピーナッツは体重に応じて1週間分が渡されます。食べられない子どもは入院して治療を受けることをすすめます。

栄養治療食のプランピーナッツの写真

栄養治療食のプランピーナッツ。1袋500kcal。ピーナッツバターときなこを混ぜたような味だそうです

栄養不良時の体重測定しているう様子の写真

食べる前には必ず手を洗うことを母親にも子どもにも教えます

(3)コイドゥ市 県立病院

保健センターでの健診の結果、プランピーナッツを食べる力がなく、緊急な治療を必要とする子どもには入院を促します。このような子どもは県庁所在地の県立病院に搬送し、すぐに診察を行います。状態により、子どもと母親は数日から2週間程度入院し、特別なミルクが与えられたり、関連する治療が施されたりします。

状況が改善されれば村に帰り、その後は村の保健センターに通い、栄養改善プログラムに参加して、子どもの成長を見守ります。

入院、通いの栄養改善プログラムとも本人負担はなく、無料で受けられるようになっています。

体重・体温・血圧を測定している様子の写真

まず体重・体温・血圧を測定。HIVの簡易テストも行います

15歳ですでに3児の母親の写真

15歳ですでに3児の母親。3番目のこの子は1歳。母親はたいへん貧しく、着替えも持たないまま入院しました

体重・体温・血圧を測定している様子の写真

ユニセフが提供する栄養強化ミルクをあたえます。ミルクの調達にコープデリグループの支援が役立っています

(4)マンジャマ村の母親支援グループ

母親たちが、保健・栄養・育児・衛生の知識を学び、子どもを健全に育てられるように、村単位の母親支援グループをつくる取り組みも行われています。母親グループは支援開始時の7.5倍965村にまで拡大しています。グループが行う学習会の講師は、保健センター職員の協力を得て、グループメンバーの母親が務めます。

生後6ヶ月までは母乳だけで育てること、食べ物を与える前には必ず手を洗うこと、バランスのとれた離乳食のつくり方などを学びます。講師役の母親は絵をたくさん使った紙芝居を用いて常に問いかけをしたり、テーマごとに学習内容の歌をみんなで歌ったりして知識の定着に努めています。

講師役は左の立っている妊婦さんの写真

講師役は左の立っている妊婦さん

学習の様子の写真

「この絵が何かわかる?」と問いかけて、参加者に考えさせながら、学習を進行しています

支援グループにいる男性メンバーの写真

支援グループには男性メンバーもいます。男尊女卑の考えがいまだ残るなか、村の男性と母親グループの橋渡し役をしています

畑の写真

母親グループでは食生活を豊かにするために、助け合いながら野菜を育てています。訪問したときは、オクラ、トウモロコシ、ジャガイモを育てていました

5.視察中に出会った子どもと母親たち

(1)カイマ村保健センターにて レベッカさんとマリアムちゃん(23ヶ月)

コミュニティ保健員が村を訪問したときにこの母子を発見しました。健診の結果、身長に比べて体重が極端に少なく、緊急に治療が必要と判断され入院することになりました。病院は県庁所在地のコイドゥ市(車で2時間以上かかります)。この親子には交通手段がなかったので、保健活動を支援しているNGOグループが車を出してくれて、県立病院まで運びました。

病院で栄養改善のためのミルクと、感染症に罹患しないよう抗生物質が与えられました。1週間の入院の後、回復し、村へ帰ることができました。今は、保健センターに通って体重などの測定を続けながら、プランピーナッツをもらっています。

レベッカさん
「実は双子だったけれども、もう一人の子は3ヶ月たたずに死んでしまった。入院するときは、町に行ったことがなかったし、知らない人ばかりでこわかった。けれど子どもが元気になりすごくうれしい。村には同じような境遇の母親、赤ちゃんがたくさんいるので、彼女たちも助けてもらえるとうれしい。このプログラムを通じて、清潔にしなければならないこと、適切な食べ物を子どもに与えなければならないことを学んだ。」

レベッカさんとマリアムちゃんの写真

マリアムちゃん、23ヶ月。入院して治療をうけ、村に帰ってきました

NGOメンバーと保健センター職員の写真

NGOメンバーがユニセフ、保健センター職員とともに、農村地域の保健活動を支えています

コミュニティ保健員の写真

コミュニティ保健員は有償ボランティアの人々です。村を訪れ、栄養状態の悪い子どもを探しだしたり、妊婦の家庭訪問、栄養指導を行っています

(2)コイドゥ市にて ドリスさんとサーちゃん(18ヶ月)

1ヶ月ほど前にサーちゃんが発熱。村で薬草を使った伝統的な療法を施されましたが、改善しませんでした。NGOのメンバーが村にやってきて、健診をすすめられ、保健センターに行きました。状態が非常に悪かったため、県立病院へ14日間入院しました。

ドリスさん
「入院した時は、このままでは赤ちゃんが死んでしまうと思って、泣いてばかりいましたが、3日で容態が改善し、無事退院できました。今はコイドゥにいる親戚のもとに一時的に滞在して、保健センターに通ってさらに栄養改善に努めています。実家はここから約11km離れた村にあり、もう少し元気になったら歩いて帰ろうと思っています。できればもういちど学校に戻って、勉強をしたい。」

ドリスさんとサーちゃんの写真

(写真左:ドリスさん)まだ学校に通っていたときに、妊娠。現在18歳。相手の男性は、妊娠がわかって以後行方がわからないといいます
(写真右:サーちゃん)18ヶ月。7.3kg、二の腕周りの測定結果は11.7cmで、重度の状態をあらわす「赤」を示していました

6.今回の視察を終えて

現地に降りたつまでに、本やインターネット上で得た情報では、国民どうしで争った悲惨な内戦、幼くして失われる命が多いこと、衛生状況の悪さ、エボラ出血熱による被害が甚大であったことなど、シエラレオネに対する印象は、暗く、重苦しいことばかりでした。しかし、実際に訪れてみると「ひとびとが純朴で明るく前向きに暮らしていて、エネルギーがある国」でした。

ユニセフが行う支援は「現地の人々が自分たちの力で問題を解決できるようになること」を究極の目標として取り組んでいます。単純に、もの・お金を支援するのではなく、現地の人々が自立できるよう人材を育て、知識や技術の普及に力を注ぐ支援プログラムです。ユニセフ・省庁・NGO・現地の人々が一丸となり、協力しあいながらすすめています。

少しずつですが着実に、現地で人材が育っていること、母親たちの間に育児に関する正しい知識が広まっていること、またそれを支える仕組みが定着しつつあることを実際に確認することができました。

シエラレオネでは、今年新しい大統領が就任し、3大政策として、教育・農業・観光の強化を掲げています。内戦の影響をうけ、好転せずにいる経済状況や社会基盤の整備など数多くの課題の前進に国民の期待も高まっています。政府の政策が成功し、子どもの栄養・環境の改善が加速することに期待したいと思います。

シエラレオネは着実に1歩1歩前に進んでいます。しかし10年近くつづいた内戦、エボラ出血熱の大流行の影響はいまだ大きく、新たな歩みがはじまったばかりです。今回の視察で、確実に改善していける希望は見いだせましたが、長く険しい道のりであることもわかりました。あらためてひとりでも多くの組合員にハッピーミルクプロジェクト、支援しているシエラレオネの現状を正確に伝え、取り組みをよりいっそう大きなものに広げていく必要性を感じています。

バックナンバー
シエラレオネ訪問レポート2018
シエラレオネ訪問レポート2014
モザンビーク訪問レポート2013
モザンビーク訪問レポート2012
モザンビーク訪問レポート2011
モザンビーク訪問レポート2010
モザンビーク訪問レポート2009
モザンビーク訪問レポート2008