HAPPY MILK PROJECT

モザンビーク訪問レポート 2008

モザンビーク訪問レポート 2008

モザンビーク訪問レポート 地図

モザンビークでは、どんな人たちがどんなくらしをしているのだろう。そして、子どもたちの栄養不良を防ぐために、ユニセフはモザンビークでどんな活動をしているのだろう。 資料を読んだだけではわからない、リアルな現地の状況やユニセフが行っている支援に実際に触れたい、知りたい、そして見聞きしてきたことを多くの人に伝えたいと思い、コープネットの職員2名が2008年6月22日〜25日、モザンビークを訪問しました。

1000人中138人の子どもが5歳の誕生日さえ迎えられない現実。でも、現地で迎えてくれたのは明るく元気な笑顔の子どもたちでした。過酷な状況の中でも、たくましく生きているモザンビークの子どもたちとそのくらし、そして子どもたちの栄養不良を防ぐユニセフとモザンビーク政府の活動をお伝えすることで、1人でも多くの方にモザンビークに関心を持っていただけることを願っています。

今回私たちが訪問したのは、モザンビーク南部のマプート州と北部のナンプーラ州です。それぞれの州でいくつかの地区保健センターや村を訪問し、食を中心としたくらしぶり、保健センターでの活動、栄養の知識の啓蒙活動を見てきました。

なぜ栄養不良になってしまうの?

なぜ栄養不良になってしまうの?「アフリカの子どもたちが、栄養不良が原因で命を落とす」と聞くと、「食べ物の量が極端に足りなくて、餓死をしてしまうのだろう」とイメージしがちかと思います。確かに日本よりは食べ物の量自体も少ないですが、栄養不良は食べ物の不足によって起こるのではなく、食事の慣習や知識不足によって、食事から必要な栄養素がとれないことによって起こっています。

例えば、北部のナンプーラ州は土地が肥よくで、ほとんどの人が農業をし、自分たちの食べるものを自分たちの手で作っているため、食べ物の量はあります。一方、南部のマプート州は、干ばつの影響で農業が難しい上、首都マプートに近いため物価が高く、食べ物を手に入れるのは北部よりずっと困難です。しかし、子どもの栄養不良は食べ物の量が足りているはずの北部の方がより深刻です。このことからも、栄養不良が食べ物の不足によって引き起こされているのではないことがわかります。
これはモザンビークだけではなく、多くのほかのアフリカ諸国や南アジアでも同じことが起こっています。
今回モザンビークを訪問して、栄養不良は「食」の問題以外にもさまざまな問題が複雑に絡み合って引き起こされていることがわかりました。

下の図は、栄養不良をもたらす原因の一例として私たちが現地で見聞きしたことをまとめたものです。私たちは、栄養不良の原因としては、大きく2つの要因「決まったものばかり食べざるを得ない食環境」、「知識不足」があると感じました。

なぜ栄養不良になってしまうの? いろいろ原因はあるけれども、例をあげると…

モザンビークの小学校入学率は9割近くありますが、家庭の経済的な事情などによって途中で学校をやめてしまう子どももたくさんいます。特に女の子にその傾向が強く、このことが女性の一般的な知識習得の障害になっています。またモザンビークの一部では、母乳育児や子どもの食事について、適切ではない風習が残っている地域もあります。例えば「初乳は汚いのであげてはいけない」「子どもに卵や魚、果物などを食べさせてはいけない」など。日本では一般的になっている子どもの栄養や保健に対する知識が十分には普及していません。また「栄養不良を防ぐためには、栄養バランスのとれた食事が必要」という知識の普及も十分ではありません。

なぜ栄養不良になってしまうの? たとえ、お母さんたちが子どもの栄養に関する正しい知識を持っていたとしても、それを実行するのは容易ではありません。モザンビーク国民の約7割は農業に従事し、ほぼ自給自足でくらしています。しかし、ほとんどの家庭では家族が食べていける分以上には栽培していないため、売るための作物はあまりないこと、また物流・流通のしくみが整っていないことから、作ったものを市場で売って現金を得るということは極めて限られています。

また、ほとんどの人々にとって市場は遠い上に、多くの人々の主な移動手段が徒歩であるため、日本のように食料を日常的に買い出しするということは困難です。結果として、おなかを満たすために、自分たちの畑でとれたものなど身の回りの限られた種類のものを食べ続けがちになります。そのことで体に必要な栄養素を摂取できず、栄養不良になってしまうのです。

子どもと栄養不良
モザンビークと日本の基本統計比較表

モザンビークにおける子どもの栄養不良を防ぐ活動

子どもの栄養不良を防ぐためには、乳幼児の発育状態の定期的な観察や栄養不良の子どもの発見・治療など医療・保健分野からのアプローチ、そして、子どもの栄養に関する知識の普及という、問題のより根本的な改善につながるアプローチの両方が必要です。ユニセフは、モザンビーク政府と共同でこれらを政策化し、ほかの国連機関や国際機関、地域のボランティアなどと連携しながら、この活動をサポートしています。実際の活動は、モザンビーク保健省が中心となって行っています。

子どもの栄養不良を防ぐための保健センターでの活動

子どもの栄養不良を防ぐための保健センターでの活動  ©coopnet乳幼児は月1回、地域の保健センターで健康診断を受けることになっています。まず、体重を量って発育状態を点検し、個人別に作成された「子どもの健康カード」に記録します。その後、カードの記録に従って、必要な微量栄養素(ビタミンAやヨウ素)カプセルの投与やワクチン接種もその場で行います。診療所も併設されており、具合が悪い時や心配なことがある時に医師に診てもらうこともできます。どの保健センターでも、効率のよい「ワンストップ保健サービス」が提供されていました。これらは無料です。
ただ、アクセスの問題はあり、子どもを背負って片道5〜6時間歩いて保健センターへ来るという人もめずらしくありません。 また、専門の知識とスキルを持った保健員が不足しており、こうした保健サービスを全土で提供するには不十分です。保健員の育成と研修のサポートは、ハッピーミルクプロジェクトの支援の柱の1つです。


子どもの栄養不良を防ぐための保健センターでの活動  ©coopnet

子どもの栄養不良を防ぐための保健センターでの活動

移動式保健センター

保健センターの建設にはコストがかかるため、まだすべての地域に保健センターはありません。そのため、保健センターへのアクセスが悪い地域には、移動式保健センターが地域を巡回し、保健センターと同じ保健サービスの提供を行っています。

子どもの栄養に関する知識の普及活動

子どもの栄養に関する知識普及活動  ©coopnetモザンビークの公用語はポルトガル語ですが、部族固有の言葉しか話せない人や字が読めない人も多くいます。TVは一般家庭にはありません。
そのため、子どもの栄養に関する知識の伝達や教育は、歌や寸劇、実演によって行われます。地域の「模範的なお母さん」と呼ばれるボランティアさんが、村の人たちを集め、栄養バランスのとれた食事や離乳食づくりを実演して見せます。この方法はお母さんたちにたいへん好評とのことです。ボランティアの皆さんの情熱、そして歌に参加したり、実演に見入るお母さんたちの真剣なまなざしに感動しました。 こうした地域で行われている栄養の知識の普及活動、広報活動のサポートもハッピーミルクプロジェクトが支援する柱の一つです。

モザンビークの人々のくらし

食べ物

モザンビークの人々のくらし 食べ物 ©coopnet 主食は、小麦、とうもろこし、ミレットなどの穀物をすりつぶしてお湯で練ってもち状にした「シマ」(写真・奥)です。「マタパ」(写真・手前)という、野菜や豆などを煮込んで作ったシチューにシマをひたして食べます。

肉や魚介類はお祝い事やお祭り、来客時にしか食べないとのことです。私たちは村の来客として迎えられたため、鶏肉なども入れたマタパを出していただきました。ありがたくいただきました。塩味でおいしいです。

移動手段

モザンビークの人々のくらし 移動手段 ©coopnet ほとんどの人の「移動手段」は徒歩です。周りに何もない田舎道でも驚くほど大勢の人が歩いていました。しかもほとんどの人がはだしです。はきものをはいているかどうかで、その家庭の経済状況がわかるそうです。ちなみに地元のお店で買ったビーチサンダルは2ドル弱でした。


住宅事情

モザンビークの人々のくらし 住宅事情 ©coopnet ナンプーラ州(北部)の典型的な家は、赤土のレンガか土壁に、わらやトタン、板などで屋根をふいています。 南部(マプート州)の典型的な家は、かやで壁を覆い、同じ材料で屋根をふいています。

モザンビーク訪問を終えて

モザンビークの未来に直結する栄養プログラムの重要性を再認識
原田 苗子(コープネット事業連合・ハッピーミルクプロジェクト事務局)

モザンビーク訪問を終えて モザンビークの未来に直結する栄養プログラムの重要性を再認識  ©coopnetモザンビークは、子どもの栄養不良だけではなく、貧困と貧富の差、エイズウイルス(HIV)感染とAIDSの拡大、孤児の増加、水と衛生、教育、出生時未登録児などたくさんの問題が存在し、それらが複雑に絡み合っています。しかし、このような過酷な状況にもかかわらず、どこに行ってもモザンビークの子どもたちははじける笑顔で、たくましく生きていました。確かにたくさん問題はあるけれど、それを将来解決していくのは彼らしかいません。ともかく今は病気になりにくい、病気になっても回復できる体力と抵抗力をつけ、生きのびることが大切なのです。栄養プログラムはそれを強力にサポートする取り組みです。今回現地に行って、栄養プログラムがモザンビークにとって重要な取り組みであることを再認識しました。


子を思う親の気持ちに国境はない
森谷俊介(コープネット事業連合・広報)

モザンビーク訪問を終えて 子を思う親の気持ちに国境はない  ©coopnet現地で感じたのは、人々が意外にも明るかったこと。そして、力強く生きていること。その姿からは栄養不良の問題があるというイメージはなかなか結びつきませんでした。しかし一方で、貧困やエイズウイルス(HIV)などの問題はまぎれもない事実であり、これらの問題と栄養不良が深くかかわっていることを考えると、今回訪問した先で見たものは氷山の一角で、より深刻な状態がこの国にあると考えざるを得ません。
ハッピーミルクプロジェクトは、目に見えやすい支援ではなく、必要とされていることにきちんと向き合う活動です。
子を思う親の気持ちはどこの国でも変わりません。「遠い国の知らない人たちを助ける」のではなく、モザンビークの人たちも、私たちと同じような気持ちを持つ身近な存在であることが、今回の訪問を通じて実感することができました。

バックナンバー
シエラレオネ訪問レポート2014
モザンビーク訪問レポート2013
モザンビーク訪問レポート2012
モザンビーク訪問レポート2011
モザンビーク訪問レポート2010
モザンビーク訪問レポート2009
モザンビーク訪問レポート2008